死別の悲しみとそのサポートを考える日本グリーフ&ビリーブメント学会

学会情報
設立主旨

設立主旨

わが国では毎年、100万人を大きく上回る数の人々が死を迎えており、その一方で個々の死を悼む数知れぬ多くの人々が存在する。グリーフ(grief)とは、喪失に対する感情的、認知的、行動的、身体的反応の総称であり、最も深刻な喪失体験の一つがビリーブメント(bereavement)、すなわち死によって重要な他者を亡くすという、いわゆる死別体験である。ビリーブメントは一部の人のみが経験する特殊な出来事ではなく、人生において誰しも1度ならず経験しうる体験である。
しかしながら、その体験は個別的かつ多様であり、死の状況や故人との関係性、遺された人の内的・外的資源、社会的・文化的要因など、種々の要因が複雑に関係し、ときに死別体験はその人の身体的・心理社会的機能を大きく低下させ、重篤な健康障害やQOLの低下につながる危険性もある。
このようなビリーブメントとそれに伴うグリーフに対する援助は、近年、わが国でも大きな社会的関心となりつつあり、日本の文化や国民性に配慮した援助のあり方が問われている。
にもかかわらず、わが国においては、ビリーブメントという体験についての社会的理解や、援助手法や提供体制などに対して、学術的な貢献は決して十分とは言えない。


そこで本学会は、基礎研究から臨床実践までを含めた学術的交流の場として、この領域の発展に向けての学際的かつ学術的研究を促進することを目的とする。
グリーフとビリーブメントに関する問題は、一部の学問領域においてのみ扱われるテーマではなく、医学や看護学、心理学、社会学、社会福祉学、宗教学、哲学、文化人類学、教育学などを含む学際的観点からの包括的アプローチが望まれる。
また、グリーフを含め、ビリーブメントという体験を明らかにするための基礎研究から、援助プログラムや実践モデルの開発のための実践研究まで、ミクロ・メゾ・マクロレベルでの幅広い研究が求められている。
さらには近年、複雑性悲嘆の診断基準化、自死や多発する災害時の遺族対応、死別の支援を行う人たちが受ける影響なども注目されるようになり、死別に関する研究範囲は拡大している。
したがって本学会では、グリーフとビリーブメントに関心のある様々な学問領域の研究者、ならびに各種専門職として死別の支援に関わっている医師、看護師・保健師、心理職、福祉職、宗教者、教育関係者、行政関係者、葬儀関係者などの方々の参画を期待している。
本学会は、グリーフとビリーブメントの理解と援助を日本で発展させることを共通の命題として、多様な研究者や臨床家、組織体が有機的に連携・協力し、学問的知見の集積を通じて、死別への専門的支援の普及と実践、教育に寄与し、心豊かな社会の発展に貢献することを目指す。


一般社団法人日本グリーフ&ビリーブメント学会
設立時代表理事 大西 秀樹